目線の先には別の人を見ている好きな人。 −少年たちの恋愛模様− まいどおなじみのポップンパーティ会場。 会場内はステージの上でセッションを行っている者、顔なじみと話をしている者、食事を取ってい る者など様々な人で溢れていた。 壁を背にして1人の少年が立っていた。 「ボゥイの奴……ボクの気も知らないで……」 整った金髪の髪に、薄く色の入った眼鏡といういでたちの少年、名をシルヴィーという。 シルヴィーの目線の先には彼と同じような服装をした3D眼鏡を身につけた少年が映っている。 そして、その横には黒ぶちの眼鏡に帽子をかぶったひょろりとした青年が立っていた。 なにやら楽しそうに談笑している。 シルヴィーはそんな二人を見たくなくて目を閉じた。 シルヴィーの脳裏に先ほどのボゥイの言葉が浮かぶ。 『あっ!ヒグラシさんだ、ごめんシルヴィーちょっと行ってくるね』 『シルヴィーも適当に回ってきなよ、僕ヒグラシさんと話したいことがあるんだ』 (ボクの……気も知らないで) ライバルであり、親友でもあるボゥイ。 シルヴィーはそんな彼のことが好きだった。 最初は、ゲーム大会で負けたのが悔しくてボゥイに勝負を申し込んでいた。 でもだんだん一緒にいるのが楽しくなった。 一緒にいたくなった。 いつのまにか好きになっていた。 こんな感情は不純だと自分に言い聞かせた。 しかし、ボゥイの目にはあるときからシルヴィー以外の人が映るようになった。 そのときからボゥイの話す言葉はその人のことばっかりになった。 そして先日、恋人同士になったと本人の口から聞いた。 「おめでとう」と口は言えたけど、心は泣きそうだった。 今もあきらめられずにボゥイのそばにいるわけだけど……。 ふぅ、シルヴィーは一つため息をついた。 あの様子じゃ話はしばらく終わらないだろう。 ショルキーさんにでも会いに行くか、と目を開いたそのとき。 目に飛び込んで来たのは水色だった。 「お、起きた起きたねてんのかと思ったぜ!」 ……否、水色の髪をした少年だった。 水色の髪に青いサングラス、そして趣味がいいとはとてもいえない服を身につけた少年がそこに立っ ていた。 シルヴィーは一瞬何が起きたのかわからなかったがすぐに正気を取り戻した。 「……ボクに、何か用?」 「ん?いや、お前の曲が印象に残ったからちょっと話してみようかと思ってよ」 ふん、服の趣味は悪いが音楽のセンスは悪くないらしいとシルヴィーは思った。 「あんな陰気なテクノ作るなんてどんなやつかと思ってよー」 ……前言撤回。 「……陰気で悪かったね」 「おっと、機嫌そこねちゃった?あ、俺サイバーね、よろしく」 少年の名前を聞いてシルヴィーは1人の人物を思い出した。 「……思いだした、あのガチャガチャ騒がしい音楽を作った奴か」 「ひっでーなぁ、俺の持てる限りを詰め込んだサイコーの音楽だっていうのに」 「言いたいことは、それだけか?」 シルヴィーはとりあえず、会話を終わらせて立ち去りたかった。 ここからでは楽しそうな二人が視界に入るから。 「ん?違う違うこっからが本題」 「……早く言え」 「ちょっと大きな声では言いにくいんだよねー、耳借りるよ?」 そういってサイバーはシルヴィーの耳に顔を近づけた。 「……なぁお前ボゥイのこと好きなんだろ?」 「なっ……!?」 シルヴィーは驚いた。 誰にも言ってない、心の内だけでひっそりと想っていたものだったからである。 「……その反応だと図星みたいだな、俺ってば天才?」 「…………」 返す言葉を失ったシルヴィーは無言でサイバーをにらみつける。 「そんな怖い顔しなくても誰にも言うつもりはねーよ」 「……何でわかった」 誰も知っているわけがない、シルヴィーはそう思っていた。 「ん?なんとなく、俺の勘?」 サイバーがゆっくりと口を開く。 「だって、俺も同じだから」 |
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