恋の角砂糖





「『これを飲み物に混ぜれば意中の彼女も一発KO!恋の実る砂糖』です」
「……は?」


なんだそれ。


−恋の角砂糖〜ver.SC〜−



「ぷはぁ!疲れたー!!」
「お疲れ、サイバー」
「ショルキー!」
ステージが終わったばかりのサイバーに声をかけると、彼が子犬のようなキラキラした目で俺を見つめる。
ひさしぶりに会ったサイバーは、前に会ったときよりも少し大人になったように見えた。
……俺の気のせいかな。
「俺のステージ、どうだった?!」
「かっこよかったよ」
俺の言葉にサイバーは気を良くし、鼻の下を指でこすって笑った。
「ステージ終わって喉乾いてるだろう、何か持ってこようか?」
「マジで!ショルキー大好き〜」
サイバーがにこにこしながら俺に擦り寄ってくる。
このまま抱きしめたい衝動に駆られるも、ここは人前。
我慢我慢と自分に言い聞かせ、サイバーの頭をなでるにとどめる。
「えーとじゃあ、アイスココア!砂糖とクリームたっぷり足して甘くしたやつね!」
「はいはい、それじゃあここで待っててくれよ」
早くしてね〜、という声を後ろに俺は飲料を配っているところに向かった。



「俺はコーヒーで……あれ、これクリームと砂糖足せないタイプなのか」
自販機の前に立ちボタンを押す。
俺は紙コップを二つ持ち砂糖とクリームの入れ物を探す。
クリームの瓶はすぐに見つかった。
俺はアイスココアが入った紙コップにクリームを二つほど足した。
しかし、周りを見回してみるも砂糖の瓶が見つからない。
テーブルの上を見ると空っぽの瓶が一つ、目に入る。
「もしかしてこれか……?困ったな」
MZDに頼むか……、俺がそう考えたとき、カバンの中に入っている硬い物体のことを思い出した。
カバンを開けてそれを取り出す。
ボゥイにもらった砂糖瓶。
ボゥイいわく、『これを飲み物に混ぜれば意中の彼女も一発KO!恋の実る砂糖』らしい……なんだそれ。
見た目はどこからどうみても普通の角砂糖……。
辺りを見回すも、MZDの姿は無く俺は散々考えたあげくテーブルの上に砂糖瓶を置き、アイスココアの紙
コップの中に角砂糖を二つ、入れた。


「ショルキー、お〜そ〜い〜」
「ごめんごめん、砂糖が見つからなくて……」
サイバーに紙コップを渡す。
サイバーが紙コップに口をつけたのを見届けて、俺も自分のコーヒーに口をつける。
「あまー!うまー!ありがと、ショルキー!」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
子供のように無邪気に微笑むサイバーを見て、俺の顔にも自然と笑みが浮かぶ。
ふと、時計に目をやると自分のステージの時間が近づいていることに気がついた。
「おっと、もうこんな時間か……ステージの準備があるからもう行かなきゃ」
「えー、もう?!」
あきらかに不機嫌そうになるサイバー。
俺はそんな彼の様子を見て軽く微笑み、頭をなでた。
「パーティ終わったあとも時間はあるから……俺のステージちゃんと見ててくれよ?」
「ちぇー、わかったよ、最前列で見ててやるからな!」
「はいはい」
俺はサイバーに軽く手を振ると、ステージの準備をするために自分の楽屋へと向かった。


「あれ、何か忘れているような……」


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