大きなクレーンの上で

「はぁ……」
二日目のパーティが終わったあと俺はマモルくんを部屋まで送り届けて１人クレーンの上にいた。
好きになったあの日からマモルくんへの思いは募るばかりで、初日にステージが終わってクレー
ンから降りたときにマモルくんが向こうから走りよってきて、「かっこよかったです！」なんて言
われた時には、そのまま抱きしめて思いを伝えてしまおうかと思ったぐらいだ。
それから毎晩…といっても二日間だけだけどパーティのプログラムが終わってからクレーンの上
でいろいろ話すぐらいの仲にはなれたけど、俺はそれだけじゃ物足りない。
ミュージシャンと小学生、ポップンパーティが無ければ知り合わなかったと思われるだけにこのま
まポップンパーティを終えてしまったら、また接点のない世界になってしまうんだろう。
できれば、これからも会ってもっとマモルくんのことを知りたいと思う。
「でも……マモルくんが俺のことどう思ってるかわからないんだよなぁ……」
おとなしく俺のひざの上にいてくれるぐらいだから嫌われてはないと思うんだけど。
マモルくんの”好き”が俺と同じ”好き”なのか。
むしろ、男が男を好きだなんて軽蔑されたりしないだろうか……。
「それが問題だよな……はぁ……」
悩む俺の心などつゆも知らず夜はただふけていった。

３日３晩続いたポップンパーティも今日で終わりです。
普段会えないような人と会って、話して、一緒に歌って、まるで夢のような３日間も今日でおしま
いなんだと考えるとボクのこころはちょっぴり寂しくなってしまいます。
でも、このポップンパーティに参加できて本当によかったなと思います。
盛大なフィナーレの後”神様”が終了の言葉をつげて第12回ポップンパーティは終了しました。
明日からの仕事のためにすぐに帰る人、もう夜も遅いので今日は泊まって明日帰る人。
会場から人がでていって、いよいよパーティもおしまいなんだとボクは感じました。
ボクは自分の部屋に帰って、明日の朝帰るので早めに寝ようと思って横になっても興奮が冷めな
いのかなかなか眠れなくて、ふと寝返りを打つと窓の外に大きな大きなクレーンが見えました。
「ジャスティスさん……」
もう、クレーンの調整をする必要なんてないからあそこにジャスティスさんがいないなんて、わか
ってます。
でも……。
ボクはあのクレーンをもう一度見たくて、クレーンの元に行くことにしました。
あのクレーンを忘れないように、ジャスティスさんを忘れないように。
クレーンの元に行くと、そこにはいつもと変わらないクレーンの姿がありました。
「やっぱり、いないですよね……」
もしかして、とちょっとだけ思ったけどやっぱりジャスティスさんはいませんでした。
……最近のボクはちょっとだけ変です。
ジャスティスさんを見ると、こう、胸のところがドキドキして、頭がぽわんとしてしまうのです。
もう一回クレーンを見ると主がいないせいか、ちょっと寂しく見えるのはボクの気のせいでしょうか、
それともボクが……。
駄目です！ジャスティスさんは誰にでも優しいんです！
きっと、ボクだけじゃないんです、だからこんなことで寂しいとか思っちゃいけないんです……。

「……マモルくん？」