時間は夕暮れ時。 図書館は窓から差し込む明かりでオレンジ色に染まっていた。 「おや、もうこんな時間ですか」 この図書館の司書であり持ち主であるアルフォンス・ミシェルは作業を止め、大きく一つ伸びをした。 玄関から外に出て閉館の札をかけようとしたその時。 「なんだ、もう閉館か?」 「城西さん」 ミシェルがその声に気づき、振り返るとそこには髪をリーゼントのように立てた細身の男、ジョニー城西がいた。 ミシェルは城西の存在を認識するとやわらかな笑みを返した。 「あー、本返しに来たんだが」 「いつも期限通りありがとうございます」 ミシェルは城西から本を受け取るとドアに閉館の札をかけた。 「せっかくいらしたんですしお茶でもいかがですか、お茶菓子もありますよ」 「ん……邪魔していくかな」 二人は誰もいない図書館へと入って行った。 -恥ずかしい奴- ミシェルの私室。 「さて……」 ミシェルが一つ指を鳴らすと宙からティーポットが現れる。 もう一つ指を鳴らすと皿に入ったクッキーが現れた。 「……いつもながらずるい能力だよな」 城西がクッキーをとりながらつぶやく。 「そんな、僕の力なんてたいしたものではありませんよ」 ティーカップに紅茶を注ぎながらミシェルが答える。 カップを渡す際にそっと指が触れあう。 ミシェルが城西の方を見ると、城西もミシェルを見ていた。 そして、そのまま吸い寄せられるかのようにミシェルの唇が城西の唇と重なる。 それはほんの一瞬、ほんの一瞬だけれどもミシェルを燃え上がらせるには十分な時間だった。 「……ベッドへ行きましょうか」 ミシェルが指を鳴らすと城西の体が宙に浮く。 「お、おいっ」 気がつくと城西はミシェルの腕の中、お姫様だっこのような体勢になっていた。 「ちゃんと自分の手でエスコートしませんとね」 「……ずるくせぇ」 ベッドに城西を降ろすとミシェルはすぐ上に覆いかぶさるように荒々しく唇を奪う。 その口づけは深く、角度を変えて何度も襲いかかった。 舌が絡まる湿った音が部屋を満たす。 「……はぁ、ずいぶんと荒々しいエスコートだな」 やっと離れた唇、城西の口からは飲みきれなかった唾液が口の端から滴っていた。 「僕も愛する人を目の前にしてあまり余裕がありませんので」 「はっ、そうかよ」 ミシェルが城西の広く開いた首筋に顔をうずめる。 「……っ」 城西が生唾を飲み込む音さえも聞き逃さない様に、ミシェルはそっと首筋に舌を這わした。 その舌は筋張った鎖骨を伝い、首の横に深い跡を刻みつける。 「……あんま跡付けるなよ、ごまかすの大変なんだからな」 「隠さなくてもいいのに」 「お前はいいだろうが俺は困るんだよ」 軽い言い合いをしている間にも今度はミシェルの手が下から入れられる。 胸を通る冷たい空気と胸を這う熱い指先が城西の鉄の理性を一枚一枚はぎとっていく。 気がつくとシャツは脱がされ、頭の上で手をまとめる拘束具となっていた。 「くっ……はぁ……」 そっとミシェルが胸に指を這わせると城西の顔がゆがむ。 喘ぎ声を我慢しようと口を閉じる城西の姿がミシェルにはひどく扇情的に見えた。 「声……我慢しないでください……」 「……うっせぇ……」 決して厚いとは言えない胸板、硬く引き締まった腹筋、あばらの目立つ脇腹。 まるで城西のすべてを手におさめるように動くミシェルの手。 その手がだんだんと下へと伸びていく。 ズボンに手をかけると城西の息が詰まるのを感じた。 そんな反応にミシェルは気を良くしながら、そっとズボンを脱がせた。 「いつみても美しい……」 普段は隠されていて見えない城西の肢体にミシェルが感嘆の息をもらす。 そっと足首を手に取ると、くるぶしにそっとキスを落とした。 「……っ」 そのまま足に舌を這わせ、内腿に赤い跡を散らしていく。 そんな刺激も今の城西の体は敏感に感じ取る。 「城西さん……」 やがてミシェルは足の付け根にある城西の欲望へとたどり着き、そっと邪魔な下着をはぎ取った。 「うっ……は、あ」 「……感じてますね」 否定するようにミシェルの視線から顔をそむける城西。 しかし、握りこむように刺激を与えられると城西の口からは喘ぎ声のようなものがこぼれおちていく。 ミシェルは満足げに城西の表情を見ると、立ち上がる城西の欲望に口づけた。 「あっ、う……」 「城西さん、気持ちいいですか……?」 「ばっ、い、言えるかそんなこと!」 顔を赤く染めながら声を荒げる城西。 ……彼は気が付いていない、その態度がすでに『YES』と答えていることに。 ミシェルは微笑むと、城西のそれを口へ含んだ。 「なっ、馬鹿やめ……っ!」 わざと音をたてるようにミシェルの口が城西を追い詰める。 「う、ぁ!」 舌先で射精を促すように刺激すると、あっという間に城西は果てた。 ミシェルは吐き出された生暖かい液体を一滴も残さぬように搾り取る。 「濃いですね……」 口の端を嘗めながらミシェルが唇を離す。 城西はそれを正視できずシーツの海へと視線を傾けた。 ミシェルはそんな城西を笑顔でながめると、自分の指を嘗め唾液で濡らす。 そして唾液で光る指をそっと城西の後ろに押し当てた。 その刺激に城西の体が小さく固まるが、そんなことは気にせずミシェルの細い指が城西の中に侵入する。 「う……くっ……」 ミシェルの指が城西の中を蹂躙していく。 そのたびに城西の口から苦しそうな喘ぎが絞り出された。 「城西さん……」 「ふ、ぅっ……!」 ミシェルの指がある一点をかすめると、城西の体が大きく跳ねた。 その点を重点的に攻めると、城西の体から力が抜けていくのを感じることができた。 そのうちにミシェルの指は二本、三本と増えていき城西を攻めたてる。 「ああ、城西さん……早くあなたを体で感じたい……」 「う……」 ミシェルがもうすっかり立ち上がっている自分自身を城西の腿にすりつける。 ふとミシェルが城西の方を見ると、二人の視線が一致した。 永遠とも感じる瞬間、二人の荒い息使いだけが部屋の中に響く。 やがて、城西が挑発するように手をこまねく。 「……来い、ミシェル」 「……っ、城西さん、反則ですよ……!」 ミシェルの熱い雄が城西の後ろに押し当てられ、一気に内部に侵入する。 「くっ、はぁあっ!」 「後悔しないでくださいね……もう止まりませんから」 奥まで達する感覚を味わうこともなく、ミシェルの腰が打ちつけられる。 「城西さん……!」 ミシェルが上から覆いかぶさり、耳元で熱い吐息を吹きかける。 「愛しています、城西さん……!」 「う、あ……っ!」 ひときわ強くミシェルの腰が最奥をたたくと、城西が達した。 そして後を追いかけるようにミシェルもきつい締め付けを感じながら達する。 「はぁ……はぁ……」 「は……ぁっ、城西さん……」 ミシェルの手が汗で崩れた城西の髪をなでる。 それと同時にまだ固さを失っていない雄を動かす。 「ミシェ……っ!」 「一回だけだなんて言わないでくださいね……許しませんよ」 部屋に濡れた喘ぎが湧き上がるのはすぐ後のことであった。 「はぁ……」 起きたくても起きあがれずベッドに横たわる城西。 ミシェルはというとおなじみの魔法で水をコップに注ぐと城西にそれを渡した。 「この、絶倫野郎……!」 城西は水を飲みながらベッドに腰掛けるミシェルをにらみつける。 「城西さんがいけないんですよ」 「……うるせぇ」 ミシェルが城西に向けて微笑む。 「城西さんがお休みの日の前日の閉館時間直前以外の時間に来てくれたら僕も考えますけど」 「う」 「僕が気づいていないとでも思っていましたか?」 ミシェルが城西の頭をそっとなでる。 「……何か嫌なことでもありましたか?」 城西は何も言わずただされるがままにミシェルの手を受け入れていた。 「僕は城西さんのすべてを受け止めたいんですよ」 「……恥ずかしい奴だな、お前……」 「なんとでも言ってください」 そっとミシェルが城西の頭にキスを落とす。 すると城西が顔をあげ、今度はミシェルの唇を奪う。 ミシェルは驚いたように、けれども嬉しそうに笑った。 「愛していますよ、城西さん」 城西は満面の笑みのミシェルから顔をそらす。 その頬は軽く赤く染まっていた。 「ホント、恥ずかしい奴……」 |
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