「いけぇっ!」 試作機のプロペラが勢いよく回り始める。 今度こそ……お願いだよ、僕の飛行機! 回転は充分、いける! と、思ったその瞬間。 「あ、あれ?うわああぁっ!」 けたたましい音を立ててプロペラの回転はあっという間に止まってしまった。 はぁ……また駄目だった……。 「どこが駄目なんだろ……」 僕はわずかに煙が立ち昇っている飛行機から飛び降り、設計図を広げる。 広げた設計図とプロペラの付け根を見比べてみる。 「設計図はできてるのに……エンジンの問題かなぁ」 エンジンを開けてみようとスパナを取り出して立ち上がる。 「ライトくーん」 と、その時上空から声がした。 顔を上げてみるとそこにはぷかぷか浮かぶ銀色の新幹線がいた。 その上に、赤いシャツの運転手。 その運転手、F-trainはにっこりと笑いながら僕に向かって軽く敬礼をした。 僕に影を落としている、音もなく宙を浮く新幹線。 プロペラはおろか、ロケットがついている様子もない。 「なんで飛んでるんだよ!」 「何ですかいきなり?!」 −空の向こう− 新幹線がふわりと音もなく着地する。 Fがまだ煙が薄く立ち昇る僕の飛行機を見て、困った顔をして頭を掻く。 どうやら僕はよっぽど不機嫌な顔をしてるみたいだ。 「あー……うん、また飛ばなかったんですね……」 「……そうだよ」 僕はFが乗ってる、新幹線をにらみつける。 新幹線はそんな僕を鼻で笑った。 ……むかつくぅ……。 「そんなに俺の相棒を睨み付けないでくださいよ」 Fがまた困ったように笑う。 「だって……だいたい、こいつはどうやって飛んでるんだよ!」 プロペラもない、ロケットもない、そもそも空を飛ぶための装置が見当たらない。 音もなく、助走もなく宙に浮く。 こいつがどうやって飛ぶのかFに何回も聞いたけど答えはいつも「わからない」だった。 「そんな……俺に聞かれたってわからないっていつも言ってるじゃないですか」 ほらね。 「ねぇ、相棒」 『ソウダナー、オレモドウヤッテトンデルカワカンネェモン、コイツニワカルワケネェヨ』 「……だそうです、生まれつき……ですかね?」 何だ生まれつきって、こいつ機械じゃん。 てゆーかなんで機械がしゃべるの? ってそんなことはどうでもいいんだって! 「……ずるい……」 「は?」 「ずるいずるいずるい!」 Fがまた困ってる。 ああ、僕Fを困らせてばっかり。 でも、ずーるーいー! 「わかんないとかそんなのわかんない!」 「まぁまぁライト君落ち着いて、はい深呼吸ー」 Fに言われるがままに、大きく息をするとなんだか失敗でいらだってた心が落ち着いてきたような気がす る。 「落ち着きました?」 「……うん、あたっちゃってごめん」 僕の飛行機をみると、さっきから上がっていた煙はもう出てなかった。 気持ちが落ち着くと、失敗したんだっていう気持ちが強く出てくる。 僕は大きなため息を一つついて、肩をがっくりと落とす。 「元気出してくださいよライト君、そうだ気分転換に後ろ乗ります?気分転換にもなりますよ」 「乗る乗る!やったー!」 Fが新幹線に乗せてくれる! 嬉しくて元気な声で答えると、Fはやっと困った顔じゃない笑い顔を見せてくれた。 それが嬉しくて僕もにかっと笑った。 |
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