きっとこの空はあいつのもとにつながっている。 ああ、退屈な授業だ。 シルヴィーは教科書を机の上に広げながら、思った。 壇上では教師がだらだらと言葉を吐いている。 明らかにやる気のなさそうな教師を一目見て、シルヴィーは一つため息をついた。 耳だけを教壇の方へ向け、シルヴィーは窓の外を見た。 外には雲ひとつ無い青空が広がっている。 太陽が照らす中を鳥たちが飛び回り、なんとも気持ちのよさそうな陽気である。 何でボクはこんないい天気の日に教室内で退屈な授業を受けているんだろう……。 これなら近くの公園にでも行って写生をする課外学習のほうが幾分ましだ。 シルヴィーはぼんやりと外の景色を眺めている。 しかし雲ひとつない青空っていうのはこういうことを言うんだろうな。 青空……か。 シルヴィーの脳裏に一人の人物が思い浮かぶ。 そういや、あいつの髪もこんな色だったな。 おまけに鳥のようにうるさくて、太陽のように能天気な笑顔を浮かべていたっけ……。 ……あのバカは元気だろうか。 だいたい、今日本は夕方ぐらいか? ……っ、何でボクがあんなやつのことを気にしなくちゃいけないんだ! シルヴィーは慌てたように教科書に目を戻した。 ちらり、ともう一度だけ横目で外の景色を見る。 ふん、何でボクがあんなバカのこと……。 「サイバーご飯だぞー」 下の階からマコトの声がする。 「ん、わかった今行くー!よし、これをセーブしてっと……」 サイバーの手がゲーム機の電源を落とす。 「うわっもうこんな時間かよ」 カーテンを閉めようと窓際へ向かうと、空は黄色から濃い紫のグラデーションを描いていた。 うっわー綺麗な夕焼けだなぁ! ……あれ、これあいつみたいじゃねぇ? 金色の髪、オレンジのシャツ、薄い紫の眼鏡、濃い紫のスーツ。 うん、あれだ、まんまあいつじゃん。 おっしゃ今日からこの色を「シルヴィー色」と命名しよう、こんな発見するなんて俺って天才じゃねぇ? 「バカ」と言うシルヴィーの冷めた顔がサイバーの頭に浮かぶ。 ……あいつ元気でやってるかな? 今イギリスって何時ぐらいなんだろうーな? わかんねぇや、パルにでも聞いてみっか。 「サイバー!」 「ウパ〜!」 下の階からマコトといつのまに下に行ったのだろう、パルの声がする。 「ああ、わりぃ!今行く!」 サイバーはカーテンを閉めると、下のリビングへと降りていった。 でもきっとこの空はあいつのもとへつながっている。 |
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