「あっ……はぁ……」 たまにはお風呂に入浴剤なんて思って、それがたまたまローズさんにもらった物で、それがたまたまローズさん愛用の物だったから。 ローズさんに包まれているみたいだなんて思ってしまった。 -僕とあなたの世界- もう気がつけば2か月もローズさんと会ってない。 僕の反応は男としての生理現象だから当然のことなんだ。 なんて、自分に言い訳をしながら布団に横になると僕は自分の熱に手を伸ばしていた。 「あ、んっ……」 着替えたばかりのまっさらな寝巻が乱れる。 長い間触れられなかったそれはすぐに涙をこぼし始めた。 手の中で生温かな雫が卑猥な水音を立てる。 『ヒグラシ……』 まるで耳元でローズさんに囁かれているような幻想に襲われる。 『いいよ……ヒグラシ、イって』 「は、あ、あぁっ!」 ひときわ強くこすり上げると、僕の体は簡単に果てた。 しばらくの間、指一つ動かせない甘い快楽に包まれる。 けれども。 「……はぁ……」 それもひと時の淡い夢。 快楽が過ぎ去ったあとには何も残らない。 ただ寂しさと空しさだけが体を支配する。 「ああ……どうにかしなきゃ」 布団に飛び散っていないことを確認して、枕元にあったティッシュで手に散った液体をふき取った。 そのティッシュをゴミ箱に投げつけるも、外れてしまった。 だるい体を起してティッシュを拾おうとしたその時、玄関のチャイムが来客を告げた。 「は、はいっ! ちょっと待ってください!」 こんな時間にと思いながら、慌てて衣服を整える。 扉をあけると、今一番会いたくて会いたくない人がいた。 えっ何それ、まだ夢の中なの? 僕は事情を把握できずに思わず動きを止めてしまった。 「……ヒグラシ?」 「ロ、ローズさん?! どうしてここに?!」 いつものような派手な服装では無かったけど、確かにその人はローズさんだった。 「仕事終わりで寄ってみたんだけど……そんなに驚くことかい?」 「え、いや何で日本にいるのかなって……」 「あれ? 今月行くって言わなかったっけ」 電話でそんな話もしたかもしれない。 やっと落ち着いてきた心に言い聞かせる。 「あ、すいません立たせっぱなしで……中どうぞ」 固まっていた表情を崩すとつられるようにローズさんも顔をほころばせた。 「いやー、久しぶりだなヒグラシの家」 「そうですね〜お久しぶりです」 部屋の中に入ると、今度はローズさんが動きを止めた。 「ん……」 「どうかしましたか?」 ローズさんが不思議そうな顔であたりを見回す。 別にいつも通りだと思うんだけど……。 「いや、なんでもないよ」 気がつくとさっきはずしたティッシュが足元に落ちていた。 僕は気付かれないようにそっとそれを拾ってゴミ箱に捨てた。 「ヒグラシ……」 「はい?」 ふと呼ばれて、振り返るとそのまま唇を奪われる。 口の中を探るようにローズさんの舌が入り込んでくる。 さっき一人でしたというのに燃えあがってしまう僕の心がひどくいやらしく思えた。 長い間奪われた唇がやっと放される。 「ヒグラシもしかして……シてた?」 「なっ……!!」 ローズさんが僕の股間に手を寄せる。 何を、と問おうとしたけれども先ほどまでの行為が生々しく思い出される。 ローズさんが口元をゆがめてにやりと笑う。 その表情にさえときめいてしまう自分が恥ずかしい。 「匂いでちょっとカマかけてみたんだけど……その反応、図星のようだね」 「えっ、あっ、その……」 反論を思い浮かべる間に、布団へと押し倒されてしまう僕。 「別に恥ずかしがらなくてもいいのに、男として当然でしょ」 服の隙間から、まだしっとりと濡れているそこに指が這わされる。 「……あっ」 「ボクもヒグラシで抜くし」 「抜くとか生々しいこと言わないでくださいっ!」 かっと顔が熱くなるのを感じる。 その反応にローズさんが笑いながら、僕のそこに指をからめる。 そんなことされると……何も言えなくなってしまう……。 「ふっ……あ、あんっ」 気がつくと下の服は脱がされておりすでに反応しきったそこがあらわにされていた。 「……ヒグラシはどうやってやってるのかな、ねぇちょっとやってみてよ」 「ええっ?!」 ローズさんが僕の手を片方ずつ股間のほうへと持っていく。 手に触れたそれはさっきと同じく雫をこぼしていた。 「ローズさん……」 「ほら、僕も手伝ってあげるから」 僕の手の上にローズさんの手が重ねられる。 「えっあ、ちょっと……」 そのままゆすぶられ強引に手にこすりつけられる。 ゆるゆるとした刺激に耐えられなくなった僕はそっと指を動かし始めてしまった。 「あ、ああ……」 自分の手じゃないみたい。 快感をむさぼりはじめた自分の手は勝手に動き回って止められない。 でも……。 「嫌だ……」 「ヒグラシ?」 こんなのは嫌だ。 「嫌……ローズさんの手がいいです……」 二人でいるのに一人でいる気分、そんなのは嫌だ。 僕の発言にローズさんが動きを止める。 その反応に僕の手もやっと動きを止めた。 「……手でいいのかい?」 「えっ? うわぁっ!?」 手がよけられると同時に、そこが生温かい空気に包まれる。 それは、ローズさんの口の中。 ローズさんが僕の欲望を銜えこんでいた。 「は、ああ、あっ!」 ローズさんの舌が絡みつく。 先ほどまでとは絶対的に質の違う快楽。 僕は力なくローズさんの頭をつかむようにして耐えることしかできなかった。 「ローズさんっ、駄目です……あ、あっ!」 「いいよ……出して」 そう言ってローズさんが僕のすべてを絞り出すかのように強く吸う。 僕はローズさんの綺麗な髪の毛をかき乱しながら達した。 「ごめん……ちょっと意地悪しちゃったね」 ローズさんが起き上がって、髪の毛を整えるようにかきあげる。 僕は乱れた呼吸を保つだけで精一杯だった。 ローズさんが自分の服を脱ぎ捨て、また僕に向かい合う。 「でも……自分でシてるヒグラシもかわいかったよ」 ローズさんの長い指がいつの間にかあふれていた僕の涙をぬぐう。 「もう……からかわないでください……」 「あはは、本気なんだけどね」 そのまま指は僕の唇をなぞる。 僕は舌を出してその指をぺろりとなめた。 それを合図にするかのように、ローズさんが僕の口の中に指を二本、三本と入れる。 僕は目を閉じてその指に舌を絡めた。 味わうように、楽しむようにローズさんの指が僕の唾液で濡れていく。 「……そんなにボクの指はおいしいのかい」 「ん……おいしいです……」 夢中で指に舌を絡めているとローズさんが笑っているのが目を閉じていてもわかった。 やがて指は僕の口を離れて行った。 目をあけるとローズさんの指と僕の口が唾液でできた銀糸で繋がれているのが見えた。 綺麗だな、そんなことを思っていると足が開かれ、高くあげられる。 ……どうにもこの態勢には慣れない。 「ヒグラシ……力抜いててね……」 自分の奥に指が這わされるのを感じる。 その指は固く閉じるそこをやさしくほぐすように周辺をなでる。 やがて体内に指が一本侵入したのを感じた。 「あっ、あ」 指は体内の感触を楽しむように、激しく動き回る。 「はぁ、ああっ!」 指があるところをかすめると、体中に電撃が駆け巡り体が大きく跳ねる。 そうすると明らかにそこを狙うように指の動きが変わる。 「あ、あ……!」 電撃にも似た快楽におぼれているうちに指は二本、三本とふやされていき、体内を駆け巡る。 「そろそろいいかな……」 指が離れていく。 けれども快楽は引かず、僕の中でくすぶり続けていた。 そして、奥に指とは比べ物にならない熱が押し当てられる。 「ヒグラシ……」 「ローズさんっ……!」 名前を呼ぶと僕の手の上にローズさんの手が重ねられる。 その温かさを感じた瞬間、その大きな熱が僕の体を引き裂いた。 「あ、ああっ、あ!」 「ん……」 苦しくて、暑くて、けれどもそれは僕が求めていたもので。 僕はローズさんの手をぎゅっとつかむことしかできなかった。 「動くよ……」 意識が熱にさらわれる。 僕はもう何も考えることができなくなった。 何も考えることができなくなった頭の中で僕はただ、ローズさんだけを求めていた。 「寂しい思いをさせてごめんね……」 頭をなでられる感触に目を覚ますと、僕とローズさんは裸のまま一つの布団にくるまっていた。 「大丈夫ですよ」 「なんだ、起きていたのかい」 「つい、さっき」 だるい体を動かして、横になりローズさんの方を向く。 ローズさんが僕を包み込むように抱き寄せた。 「こうやってローズさんがいてくれるから、僕は大丈夫です」 僕とローズさんが同じ世界にいる、ただそれだけで僕は大丈夫。 ……寂しいからその……する時もありますけど……。 「ローズさんいい匂い……」 本物のローズさんの匂い。 「ヒグラシだって、同じ匂いがするよ」 「それは……同じ入浴剤を使ったから……」 「そうだね……ヒグラシもいい匂いだ」 目を閉じるとそのかすかな匂いが胸一杯に感じ取れる。 「そうですね、いい匂い……」 それはまるで僕とローズさんが一つの存在になれたみたいで僕はうれしかった。 |
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