恋の角砂糖



「最前列行かなきゃ、ヒグラシさんこれあげる!」

久しぶりのポップンパーティ、僕は見知った青い頭の男の子、サイバー君に声をかけた。
しばらく話をしていると突然、サイバー君が驚いたような声をあげたと思ったら手に持っていた紙コップを、
僕に渡してきた。
「ちょ、ちょっとサイバー君?!」
「ごめん、ヒグラシさんまたあとで!」
僕が止める間もなく、サイバー君はステージの方へと走り出して行ってしまった。
いったいどうしたっていうんだろう?
とりあえず、取り残されてしまった僕は椅子に座りながら開幕されたステージを眺めることにした。
「はぁ、いつもながらポップンパーティは緊張するなぁ……」
先ほどのステージの興奮を思い出し、僕の心に充実感が湧き上がる。
僕は一息ついて、手の中にあった紙コップの中身を飲み干した。
「…………っ?!」
その瞬間、僕の舌は焼き尽くされるような甘みに襲われた。
甘っ!!え、アイスココアですよね?これ……。
……あ、これサイバー君のだった……。
どうしよう、つい飲んじゃった……。
僕は空っぽになってしまったコップを覗いて、サイバー君に心の中で「ごめんね」と一言謝った。


−恋の角砂糖〜ver.RH〜−


体が……熱い、なんか頭がくらくらする……。
今日のプログラムも無事終了し、参加者の人々が皆自分の部屋に戻り始めるころ、僕の体は熱に浮かされ
ていた。
体が異常な熱を持っているのがよくわかる。
最近寝不足だったから風邪でもひいたかなぁ……。
僕はふらつく足を引きずりながら自分の部屋へと戻ろうとした。
けれども、足はなかなか言うことを聞いてくれなくて、一歩足を進めるのにも非常におっくうな状況であっ
た。
「ちょ、ちょっと休憩……」
僕は誰に言うでもなくつぶやくと、壁に自分の身をゆだねることにした。
これじゃあ明日のパーティには参加できないかもしれないなぁ……。
体が小刻みに震えているのが自分でもよくわかる。
壁にもたれかかっている体が少しずつずり落ち、僕はやがてへたり込むように床に腰を下ろした。
「は、ぁ……」
これからどうしよう。
通りかかった人に手を貸してもらおうか、などとぼんやりと考えていたその時。
「……ヒグラシ?!」
上空から僕の名前を呼ぶ声がする。
霞がかかった頭で、上を見上げるとそこにはローズさんがいた。
「あ……ローズさん……」
「どうしたの?!こんなところに座り込んじゃって……」
ローズさんが僕を心配するような目で見る。
霞がかかった頭でも、その表情ははっきりと見て取れた。
「何か、体の調子が悪いみたいで……風邪かもしれません……肩、貸していただいてもいいですか?」
「もちろん!大丈夫?ずいぶん顔赤いけど……」
ローズさんが僕の体に手を触れ、ひっぱりあげる。
その瞬間。
「……うぁっ……!」
僕の口から思わず無意識に声がこぼれる。
「ヒグラシ?」
肩に担ぎ上げられたおかげで、ローズさんの顔が間近にある。
「だ、大丈夫です……」
ローズさんが心配そうな目で僕を見る。
そして、そっと僕の額に手をあてる。
「……っ!」
声にならない叫びが、喉の奥から漏れる。
「……本当だ、ずいぶん熱があるみたいだね」
「あ……はい、そうですね……」
ローズさんが一歩一歩、僕を引きずるように歩を進めだす。
僕はその横で、体の熱が高まるのを感じていた。
体に、額に触れられたときに体中を駆け巡った甘い電撃。
その正体を僕はこの人に嫌というほど教えられていた。
そしてそれと同時に、この体の熱を収めることができるのもこの人だけだと、僕の体は知っていた。


カチャリ、と鍵の閉まる音が静かに響く。
ローズさんが僕を部屋の中に引きずり、ベッドに横たえさせてくれた。
自分のアパートにある布団とは比べ物にならない心地よさに、僕の心は安堵する。
「大丈夫、ヒグラシ?」
ローズさんの目が僕を見下ろす。
その視線が僕の体に浴びせられるたびに、心臓が跳ね上がる。
「水でも汲んでこようか?」
違う、僕が欲しいのは水なんかじゃない。
僕が求めているもの、それは。
「水は……いいです、ローズさん、もうちょっとこっちへ……」
「こうかい?」
ローズさんがベッドのふちに腰を掛ける。


僕は、ローズさんを力のままにそのまま引き寄せた。

……もっともそんなに力はこもってなかったけど。



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