ジャスティスがこぼしたカクテルをおしぼりで拭く。 「えー、じゃあどこまでいってんの?フェラ?素股?」 「そんなことできるわけないじゃないですか!マモルくんはまだ11ですよ?!」 「俺は10の時にはもう一人でしていたぞ!!」 「……最上さんと一緒にしないで下さい……まだキスだけですよ」 まー、健全ですこと。 「デートぐらいはしてんだろ?」 「まぁ、それぐらいは……俺の家で二人で過ごすことが多いんですけど」 「ふーん、何してんの?」 「何って……一緒に本を読んだり、あとは昼寝とか……」 昼寝?!自分の家で二人っきりで昼寝?! 「そんなおいしい状況で何もしないなんて……てめぇ実は男じゃねぇな?!」 「男ですよ!」 いやー、だって据え膳食わぬは男の恥だろう。 ん、酒がなくなったな、頼むか……。 「ジャスティスも何か飲むか?」 「あ、いただきます……」 しばらくすると日本酒とカクテルが運ばれてきた。 ジャスティスは仕切りなおすようにカクテルで喉を潤している。 「いや、したくないとか言うわけじゃないんですよ……」 ジャスティスがポツリと言葉をこぼす。 「俺、若いころは結構遊んでまして」 グラスの中身を飲みながらジャスティスが語る。 「大学に通っているころは、来るものは拒まず去るものは追わずな感じで」 まぁ、顔はいい男だし女は寄ってくるだろうなぁ。 「……ここだけの話、男としたことも数回……」 おやま。 「それじゃあ、余計に好きなやつがそばにいるのつらいんじゃねぇの?」 「そうなんですよ!」 ジャスティスが一気にグラスを空にする。 あー、酔ってきてやがるな、こいつ……酒弱いなー。 「だって想像してくださいよ!好きな子が俺の膝の上で無防備に寝てるんですよ!? 無邪気に笑って『僕、ジャスティスさんが欲しいです!』とか言うんですよ!? 絶対俺との間に『欲しい』の意味の食い違いが起こってますよ、あれは……」 ああ、そいつはくるなぁ……。 「けど何か押し倒したら汚しちゃいそうで……何ていうかマモルくん真っ白なんですよ……」 「確かに、そいつはわかるな……マモルちゃん純粋っつーか」 「そうなんですよ!何かぐっときてもキラキラした目で見つめられると悪いことをしてるようで……」 まぁ、小さい子にいたずらするのは世間的には犯罪だがな……。 「ホント、俺、マモルくんに嫌われたくないんですよ」 まるで俺にというよりも自分に言い聞かせているみたいだ。 「ここまで好きになったというか引き込まれたのは、初めてかもしれないです……俺」 愛されてるねぇ、マモルちゃん。 「実は今日もマモルくんを家まで送り届けた帰りでして」 「なんだ、用事ってそれだったのか」 「だってまさか知られてるとは思わないじゃないですかぁ……」 「ははは、でもこのままでいいのか?つらいんだろ?」 「そりゃつらいですけど……でも……」 こりゃ、ずいぶんたまってるみたいだな……若いねぇ。 「ま、ぷっつり行く前にどーにかしろよ」 無理やりなんてするんじゃねぇぞー、マモルちゃん泣くぞー。 「マモルちゃんはたぶんお前のこと大好きだから」 パーティの時、マモルちゃんの目もジャスティスのことが大好きだと言っていた。 「はい……」 「おらぁ、そんなしけた顔すんじゃねぇっつーの、酒がまずくなる!」 「す、すいません!」 「ま、あんまり悩みすぎてマモルちゃんに心配かけるなよ、小さい子は意外と敏感だぞ?」 お前、わかりやすいし。 「は、はい!」 「いざとなったらしっかり要求を伝えるのも恋人同士では大切だからな?」 気持ちがすれ違ってしまうのが一番危ない。 お互いを思いすぎて気持ちがすれ違うのが一番悲しい。 と、俺は思う。 「そうだな……むしろ、1から教えて染めちまえば?」 「染める?」 「マモルちゃんが真っ白なら、染めちまえよお前だけの色に」 「俺だけの……」 「『ジャスティス先生の良い子の保健体育☆』」 あ、また赤くなった。 どんな想像してんだか……。 これは……押し倒すのも時間の問題かね。 ちっ、ラブラブな奴らはいいねー。 ジャスティスはまだ妄想の世界にいるようだ。 あ、鼻血噴いた。 何を想像してるんだか……。 「ま、とりあえずはうまくいってるようでなによりだな」 すっかりぬるくなってしまった日本酒に口をつける。 ま、がんばれよ。 |
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