その姿を見つけたら僕は自然と走り出していた。 その大きな背中へと。 -大きな目標- 「ロケットのおっちゃん!」 「おー、ライトか」 久しぶりに多摩川に行ったら久しぶりにロケットのおっちゃんの姿を見つけた。 横に座るとおっちゃんが頭をなでてくれる。 「ねぇまたどこか行ってたの?」 「ちょっと南極までな」 「ちぇっ、いいなぁ……」 おっちゃんは僕と違って自由自在に空を飛ぶことができる。 なのでいろんなところに行っていて、僕はそれがとてもうらやましい。 おっちゃんはそんな僕の心を見透かしているかのように笑った。 「ライトは自分で行くんだろ?」 「そうだけどさぁ……そうだ、新しい設計図描いたんだ、見てよ」 そう言って、僕は昨日徹夜でかきあげた設計図を広げた。 「こりゃ、また壮大な設計図だな」 「でしょー?」 おっちゃんが興味深そうに僕の設計図を眺める。 へへっ、今回のは自信作なんだ! 「……ん? ここおかしくね?」 「えっ、どこ?!」 おっちゃんが設計図のある点を指さす。 そんなわけない、と僕は設計図の端で計算をやり直す。 そうしたら、確かに間違っていた。 「うわぁ……本当だ」 今回のはいけるっておもったのに……。 「……ドンマイ」 おっちゃんが慰めてくれるみたいに僕の肩を叩く。 「あぁ、何回も何回も見直したのにな……」 「これが経験の差ってやつよ」 「……そうやっていっつも僕を子供扱いするんだ」 僕がむくれるとおっちゃんが苦笑いする。 「そんなこと言ってねぇだろうが……ま、悪くなかったぜ」 「あーあ、やっぱりおっちゃんにはかなわないや」 僕は地面の上にごろんと寝転がった。 視線の先にはおっちゃんのピカピカ光るロケットが目に入る。 おっちゃんはこのロケットで空を飛ぶ。 「ねぇ」 「ロケットの設計図見せろっつーのは無しだぜ」 「……ちぇ」 おっちゃんは飛行機作りに対してアドバイスをくれるけど、このロケットに関しては何も教えてくれない。 企業秘密? だって。 おっちゃんが僕の横に寝転がる。 「だいたいロケットと飛行機じゃ根本的に設計が違うだろうが」 「……でもさ、もしかしたら勉強になるところもあるかもしれないじゃん?」 「そうだな、じゃあライトがもう少し大人になったら考えてやるよ」 「もー、また子供扱いして!」 僕は飛び起きて抗議をする。 もうおっちゃんってば、真面目に聞いてよ。 「ははっ、俺に言わせりゃお前はまだまだ子供だよ」 そういわれちゃそうなんだけど……。 僕はもう一度寝転がって空を眺めた。 おっちゃんもたぶん空を見ているんだと思う。 「ねぇおっちゃん」 「何だ?」 「いい天気だね」 「そうだなぁ……」 「いつか一緒に空を飛ぼうね」 「……おっと、それを言う相手は俺でいいのか?」 「どういう意味?」 「ふっ……この意味がわからないなんてやっぱりライトはまだまだ子供だな」 「なんだよ、それ!」 ちぇっ……いつか見返してやる! 見てろよおっちゃん! おっちゃんはすごい。 僕よりもずっと色んなことを知っていて、色んなところに行ったことがあって。 だからいつか、いつかおっちゃんも驚くような飛行機を作って、おっちゃんよりも早く、高く飛ぶ。 それが今のところの僕の目標。 ……ロケットのおっちゃんが僕の、目標。 |
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