夕暮れの道をヒグラシとローズが歩く。 二人の手にはそれぞれ大きな買い物袋が提げられてる。 「ね〜ヒグラシ〜」 ローズの問いかけに答えずヒグラシがすたすたと歩く。 「お願いだから機嫌直してよ、ね?」 ヒグラシがローズのほうをちらりと見る。 「あんなに外では脱がないでって言ったのに……」 「だから悪かったって!ボクも我慢したんだけどついファンキーな音楽が聞こえてきたもんだから……つい」 「……お魚売り場の販促ソングがですか……はぁ」 ヒグラシが大きくため息をひとつつく。 「ワイセツ物陳列罪って言葉知ってます?僕が止めなきゃどうなっていたか……」 「ごめんごめん、本当に反省してるってば!」 「ああ、もうしばらくあのスーパーいけないや……生鮮食品が安かったのに……」 ヒグラシががっくり肩を落とす。 「ごーめんってば、ボクが悪かった!」 「いいですよ、もう怒ってないですから……」 ヒグラシがまたひとつため息をつく。 隣にをちらりと見ると、申し訳なさそうにしているローズの顔が見える。 「……もう脱ぐのは僕と二人だけの時にしてくださいよ?」 ヒグラシがひとつ言葉をもらす。 ローズは最初その言葉の意図がわからなかったのかきょとんとした顔をしていたが、すぐに満面の笑みを浮 かべた。 ヒグラシは急に笑みを浮かべたローズの意図がわからず、軽く首をかしげている。 ローズがヒグラシの耳元に顔を寄せる。 「それって、二人きりのときなら服を脱ぐようなことしていいってこと?」 ヒグラシが一瞬固まった。 すぐに言葉の意図を読み取ったのか、ヒグラシの顔がかぁっと赤くなる。 「ち、違います!僕が言いたいのは人前で脱がないでくださいってことで……!!」 「だから、ヒグラシの前でなら裸になっていいんでしょ?」 硬直しているヒグラシの手からローズが買い物袋を奪い取って歩き出す。 「それじゃあ二人だけになったら存分に裸にならせてもらおうかな……君もね」 「ローズさん!」 鼻歌交じりで歩き出したローズの後を、ヒグラシが慌てて追いかける。 ヒグラシのアパートまであと、少し。 オレンジに染まった道を二人が歩く。 |
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