君の背中には壁。 君の肩には僕の手。 君の横には取り落としたかばん。 君の目には困惑と怯えの色。 ねぇ、お願いだからそんな目で見ないで。 僕と君は友達だと君は言う。 「……セシル、くん……?」 君の口から困ったような声が出される。 ごめんね、友達じゃなくて。 ポップンパーティで出会ったあの日から、僕は君のことが好きだったんだ。 君が、僕の音を「綺麗」と言ってくれたあの日から。 僕は君に恋をしていたんだと思う。 でも、君が選んだのはあの温かい黒を持つ人で。 純白を持つ君にはとても似合ってた。 あの人のような黒になれない灰色の僕には君のような白が暖かかった。 君の近くにいれば、僕も君のような白になれるような気がしたんだ。 けれど、友達として近くにいるうちに、そんな白を濁らせてみたくなった。 混じりけの無い白は他の色を混ぜればすぐに色が変わってしまう。 君を、僕と同じ色にしたくなった。 壁に押し付けたけど一言も発しない僕を君の目が見る。 困惑と怯えが混じっているけれども一点の曇りも無い目。 相変わらずの純白の目。 お願いだからそんな目で見ないで、決意が揺らいでしまうから。 しばらくの空白。 僕も君も止まったまま動かない。 「……肩にゴミついてる」 「え?あ、ありがとう……」 君の肩から架空のゴミをはらいおとす。 「そういえば、ジャスティスさんと会う約束があるんじゃなかったの?」 「あ、そうでした!」 君が取り落としたかばんを僕が拾う。 「僕もこれから演奏に行かなきゃいけないんだ、またね」 「え、あ、はい、それではまた遊びましょうね」 かばんを受け取る君の手。 僕を見る君の目。 お願いだからそんな目で見ないで、全てを見透かされているような気がするから。 「それじゃあね、マモルくん」 「あ……はい、それではまた、セシルくん」 僕と君はそれぞれ別れ道を反対方向に行く。 ……やっぱり僕には君の色を汚すことはできないよ。 僕が好きなのは、君。 純白のような君。 一度混ざってしまった色は元には戻せない。 それでも、君のそばにいれば君のような白に近づけるような気がするんだ。 だから、お願いだから君の近くで君の色に浸らせて欲しい。 ねぇ大好きだよ、マモルくん。 願わくば、その白が永遠の色であることを。 |
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