肩を並べて



「う……ん……」
どれぐらいの時間がたったのだろうか、ジャスティスが目を覚ました。
カーテンの隙間からもれる日の光が太陽がずいぶん西に傾いてしまったことを示している。
「ふわぁ……よく寝た……って、しまった!」
ジャスティスがいきおいよく体を起こす。
「マモルくん……帰っちゃったよな……約束してたのに」
自己嫌悪からかジャスティスは頭を抱えた。
「……?」
ふと気がつくと、下の方からかすかな寝息のようなものが聞こえる。
ジャスティスが下を見ると、そこには横になって寝ているマモルの姿があった。
ジャスティスはマモルを踏まないようにソファーから降りると、マモルの近くにしゃがみこんだ。
「マモルくん……寝てる」
どうやらあのまま寝てしまったのだろう、ジャスティスの白いコートに身を包んだマモルは崩れ落
ちたように横になっていた。
よく熟睡しているようで起きる気配はない。
「これ、俺のコートだよなぁ」
白いコートの裾は床に広がりちょこん、と白い足先が覗いている。
「また大人になりたいだなんて思ってたのかな……」
マモルの口癖である「早く大きくなりたい」という言葉がジャスティスの頭をよぎる。
ジャスティスは眠るマモルを横目に思いを馳せた。

マモルくんは早く大人になりたい、大きくなりたいってよく言うけれど俺にしてみればそんなに急
がないでほしいんだけどな。
だって、一緒に歩いていきたいじゃない?
そりゃ、好きな子の前では大人に見られたいとかかっこつけたいって気持ちもちょっとはあるわけ
なんだけどさ……
俺は、マモルくんと一緒に一歩一歩同じ時間を歩いていきたいわけで。
マモルくんだけに先行かれちゃうとちょっと寂しいかななんて思ったりするんだ。
マモルくんの成長する姿も見ながら肩を並べて一緒に歩いていきたい。ずっとね。

自分の思いにジャスティスはくすりと笑みをもらす。
「ホント、マモルくんとずっと一緒にいたいんだよ、俺……なんかプロポーズみたいだな」
投げ出されていた小さな手にジャスティスはそっと自分の手を重ねる。
無意識に軽く握り返してくれるその手が了承の返事のように思えてジャスティスは少し嬉しくなっ
た。
「プロポーズか……」
ふと、マモルが身にまとってるコートが真っ白なウエディングドレスのようにジャスティスの目に
映る。
着る人が違うとこんなにも印象が変わって見えるのかとジャスティスは思った。
「あー、俺タキシードもってないな……あ、俺がマモルくんのタキシード着ればいいのか」
ジャスティスのコートを着たマモルと、マモルのタキシードを着た自分を想像してジャスティスの
顔に笑みが浮かぶ。
「……ジャスティスさぁん……」
マモルの口から寝言がこぼれる。
「……俺の夢でも見てくれてるのかな?」
そっとマモルの髪の毛をすく。
柔らかな髪が手の間をすり抜けていく。
……いつか終身共生法案を提案してみようかな?
自分の想像に苦笑しながら、ジャスティスはマモルの頭から手を離した。
「おっと、そろそろマモルくんを起こさなきゃ」
そろそろ空にオレンジが混ざり始めるころ、マモルの家まで送っていかなければならない。
帰りの道の花屋でマモルくんに似合う小さな花束を買っていこう、などと考えながらジャスティス
は幸せそうに眠るマモルに優しく声をかけた。


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